2016年08月15日

コミュニケーション・ジャンピングボレー

「ハンマー投げってどこで練習するんでしょうね?」
「どこでってお前、あるだろ。投擲競技用のブースみたいなやつがよ。フェンスで囲まれててサークルの中でやってるんだろうよ普段から」
「いや、そういう話じゃなくて普段ですよ。自主練ですよ自主練」
「なにが」
「迷惑じゃないですか。部屋でできますか?野球なら素振りぐらいできるしサッカーでも庭とか駐車場でリフティングならやれるじゃないですか。勉強部屋でハンマー振り回してたら壁とか家具とか危ないでしょう。僕なんかヨーヨー流行ってた時にふすまに穴空けて親に殴られたんですから。外でやるんだって回すところまでですよせいぜい。興が乗って放り投げたら無差別にどこかの誰かが死ぬかもしれないんですよ。どこで普段やればいいんですか?ハンマーって。」
「そらお前、室伏ってたしか外人とのハーフだろ。持ってるってきっと。日本じゃ到底個人じゃ持てないような広い広い土地を持ってんのよ。アルプスかどこかに。ハイジ見たことあるかハイジ?世代じゃないから伝わらんかもしれんけど、金持ってると思えないしょぼくれた爺さんだってあれだけ広い牧場を管理してるわけだから。ハンマーなんかブン投げ放題だろ」
「ハンマーやってるやつ全員外人前提で話を進めるのをやめてもらっていいですか。日本でだって大会開かれてるでしょうが」
「だから弱いんだよ日本人は。室伏は環境に恵まれただけなんじゃないか?どうだ、解決しただろ。外人は自主練やってるんだよ。野っぱらのど真ん中で」


すいません、生2つ…


「いや僕はまだ納得いってないですね」
「もういいだろ。普通に最近休みの日何してんのかとか近況報告でいいだろ、そろそろ」
「休みの日にこんなことばっか考えてるから今言うしかないんじゃないですか。あなた以外に聞いてくれそうな人間がいないんですよ。助けてください」
「そこまで見初められる筋合いないよお前から」
「百歩譲って外人は草原でハンマーを振り回してるとしますよね。どうやって持ち運ぶんですか?ハンマーを」
「ナップサックみたいなものに背負っていくんだろうよ」
「ハンマー回すまで背筋発達しきってる人間がナップサック背負ってるの、見たことあるんですか?あれは小学生かなで肩の大学生しか身につけちゃいけないアイテムなんですよ」
「確かにないよ。俺もなんでナップサックなんて提示したかわからないよ。それぐらい当の疑問に対して真剣に向き合えそうにないんだよ」
「おもむろに首にひっかけて行くんですかね?チェーンを。すいません銃刀法って鉄球もアウトなんですか?」
「刃渡り何センチうんぬん以上がアウトっていうからな。"銃"でもないし。ことによるとセーフかもしれない。セーフだセーフ。首に鉄球結んである鎖を巻き付けてる人間を電車で見てもお咎めないんだろうな。それだそれ、はい解決!料理頼もうぜ料理。まだ何も提供されてない状態でこれだけ何も生まない議論で消費してる卓なんかないだろ。見渡してくれよ周りを」


「あ、槍が解決してない」
「は?」


生2つお持ちしました…


「槍ですよ槍。投擲用の。スピアーですよ。ジャベリンですよ」
「どれ頼もうかある程度品定め終わってたんだよ俺は。おしながきの朱色の筆ペンで線引いてるハゼの天ぷらと大好きなチャンジャを、生が出てきたタイミングで注文しようとしている。何故わからないんだ」
「持ち運びの問題です。ポータビリティの面で解決していない。槍、そこそこ長いですよ。あれで電車乗れないでしょ。さっき出てた銃刀法にも引っかかりますよねたぶん。どうしますか?」
「シャコン、シャコン、シャコン、ってなるんだろきっと」
「どういうことですか?ちょっと意味が」
「だからシャコン、シャコン、シャコンだよ。高枝切りバサミあるだろ。テレビでしょっちゅう通販してる。あの要領で3段階ぐらいで長さを調節できるんだよきっと」
「日本製の槍は8回シャコン出来たりするんでしょうね。おのおのしっくりくる長さは違いますから」
「槍のメーカーが日本に居を構えている前提だね」
「砲丸投げの砲丸は日本の町工場製がいちばん遠くまで投げれるそうですよ」
「報ステか何かで見たことあるな」
「遠くまで鉄の球体を投げ飛ばして、それで競って世界一になりたいって思ったことありますか?僕はないです。もし自分にそのパワーがあればアマレス、柔道とか別の五輪種目でも上位を狙えるはずです。技術問題を加味しても、備わっている膂力をもってすれば本気で4年間メダルに向けた鍛錬を積んでそこで世界の頂点に立てますよきっと。あるいはプロレスだってマッスルミュージカルだって、ショービジネスとして確立されているジャンルに集中すればもっと金銭的には潤うチャンスは増える。それなのにただただ重たいだけの鉄球を遠くまで放り投げた距離で競う意味なんかありますか?だからどうしたと思いません?まあ、砲丸だけじゃなくてハンマーも槍も円盤も全般的に言えることなんですけどね。ちょっと理解しかねますね。僕には。練習場所、ポータビリティ、何もかも非効率的なんですよ。日本の技術がそんなくだらない分野に応用されていちいち浮かれてるからこの国はダメなんだ。そうは感じませんか?」
「唾を飛ばすな。頭に入ってこない」


料理のご注文良ければお伺いしますが…


「ポテトフライと鶏のから揚げ、出し巻き。とりあえず以上で」


かしこまりました…


「お前は死ね」
「えっ、何でですか?」
「俺が筆ペンで朱色の線を引いているおしながきにある程度目星をつけているくだりがあったよな?俺は楽しみたいんだよ。大衆居酒屋だろうがその時に応じて一番店側が自信をもって提供してくれている品もんを食べたい。お前の些細な疑問と妄想に付き合っているだけでも度量が有り余っているよ。なおかつその上に無礼を重ねるか。ハゼの天ぷらと大好きなチャンジャを食いたかったんだよ俺は」
「次追加すればいいじゃないですか」
「ポテトフライと鶏のから揚げ食っちゃったらある程度満足しちゃうだろうが。油に対しての許容量が体育会系のお前とはだいぶ差があるんだよ。年齢だって5つも離れてれば案外壁があるからな。ポテトフライとハゼの天ぷらは共存しないんだよ。揚げもん、一品もの、プラスアルファさっぱりした料理で完結したいんだよ。労わってくれよ。無理強いしているわけじゃないから」


えーポテトフライと鶏のから揚げ、お待たせ致しました…


「じゃあ俺が片付けますから。腹減ってるんでこのくらいは軽いです。先輩は先輩の食べたいものを食べてください」
「いや食うよ。腹減ってるから。同じタイミングで仕事上がってるんだから判れよそのくらいは」
「それは止めはしないですけど。案外ポリシーないんですね」
「寛容なんだよ俺は。本来は怒りたくない。余計なエネルギーを怒りに回したくないんだよな。……あー、美味い!から揚げ美味い!ポテトの安定感も落ち着く!ありがたい!」
「ほら、悪い脂って美味しいでしょ。どんなに強がっても。先輩は結局ケチつけたがりなだけなんじゃないですか?ハンマーだって槍だって、シンプルに力があった上で技術が備わっている人間が勝つんですよ。効率性とか将来性とか加味したがるところがいけすかないですね。だから理屈っぽくて女性に理解されないんですよ。もっとおおらかに生きたほうがいいんじゃないですか?独身でいるよりそっちのほうが楽しいですって人生」
「お前絶対殺すからな」


気持ちが悪い、居心地が悪いと感じるか、あるいはホールの店員の気まずい佇まいに肩を持つか。もしくはここまで不器用なやり取りはあり得ないと断定するコミュニケーション極右の皆様へ。相手は案外ふざけてます。思っているよりあなたのことを馬鹿にしています。お互い。ですので、もっと思いやりのない、適当なセンタリングを上げてください。無理やりな体制でボレーシュートを撃ちますので。信頼をしてください。案外際どいことを言ったとて、目上だろうが目下だろうが、受け止めようとするハッスルは見せてくれるはず。どうかよろしくお願いします。もっとキラーパスを放っていこう。周りを見くびるのをやめましょう。から揚げもお刺身も美味しい。公共広告機構です。



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posted by JET at 23:36| 文章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする