2016年02月17日

中学生女子、君は豚ではない

聖林檎学院中等部に通う中学1年生の少女・国分果林。ある朝、学校に遅刻しそうになって急いでいた果林は、道端で偶然子豚を見つける。しかしその子豚はブーリンゴ星という星の王子様・トンラリアーノ3世(トンちゃん)で、修行のため地球に来ているという。そして、いきなり「果林に変身してスーパーヒロイン『ぶーりん』として活躍してほしい」と頼む。しょうがないと、果林が変身してみると、なんとピンクの『ブタ』になってしまった。


『とんでぶーりん(94)』のあらすじです。この記事は、不可抗力でどういうわけか豚という生き物に变化させられてしまった中学生・女子に向けて贈る、いやいや、君は決して心まで豚になったわけではない、悲観するな、万事うまくいく。というエールである。以下、エンディングテーマ、『ぶーりん・あ・ら・もーど』を引用していきます。




♪チョコ・パ チーズケーキ プリン・ア・ラ・モード まっしろバニラはキャラメルリボン
 洋なしタルトに横目で気になる 本日のケーキはモンブラン

メニューに目を通しながらも、おそらく壁掛けの黒板か何かに書かれているであろう「本日のケーキ」にまできちんと目を配れているあたりポイントが高い。店側が意気込んで提供している、今日イチのケーキに対する心構えは、何も考える頭を持っていない豚のそれとは明らかに異なる。 

♪約束したばかりのダイエットだけど なかったことにして やぶーりん
 次から次に目移りしちゃうけどダメ! 全部たのんだら アンビバぶーりん

ダイエットの天敵はストレスである。自制が効かなくなったが最後、あっという間に豚への坂道を転げ落ちていってしまう。ここでは一見「なかったことにして やぶーりん」と己を咎める心を捨ててしまっているように見えるが、中学生・女子の財力との兼ね合いで一回のぜいたくに使えるマックスが1,000円少々として、飲み物1杯、ケーキ1つに収める意気込みたるや、いくら欲望が散らつくとはいえ、考える力が失われていない。単にカロリーを摂取したいだけなのであれば、1,000円以内でおかしのまちおかで豪遊することも可能である。量より質を選択している。決して豚の思考に陥っているとは言えない。


♪たくさんメニューの中から(ぶぶぶぶーりん えらぶぶーりん)
 いちごのパフェたのんだの(ぶぶぶぶーりん よろこぶーりん)

"いちごのパフェ"を注文するという、つまるところ安定、「間違いなく美味しい」を求めてしまう日本女性の心のあどけなさに惹かれてしまう。絶対に美味しいからな。苺が生クリームの上に乗っかっている物理のうまいやつは、平和な家庭に育ってきた、両親の寵愛を存分に得て育ってきたニンゲンの女の子がステキだと空想に思い描く第一の表層に現れる。自分の辿ってきた家族生活、経済状況を鑑み、いちごのパフェをオーダーする。


 まるで幾千の きらめく流れ星 たったひとつだけ めぐりあうみたいに
 あなたにこうして せっかく逢えたのも 偶然じゃないわ 瞳そらさないで


涙が出てきた。渡されたメニューの数ページや、店内の入り口脇に据えられた黒板という限りなく少ない情報量から、幾千の流れ星から、たったひとつを掴み出す覚悟がここで歌われている。そして、こうした出会いが偶然ではない、たまたまの気の紛れではない。"瞳そらさないで"という決意から、いちごのパフェ という概念に相い対し、如何に今回の1,000円強にかける体重、加圧が重いか、読み取らなくてはならない。女子中学生の千円札と、使い道のない成人男性のサイフでくしゃくしゃになった千円札の価値はまったく違います。



♪自由の女神に一目ぼれぼれ ナイルの流れで頭冷え冷え
 午後の紅茶運ぶインド象にゆられて エッフェル塔までお願い
 知らない街をひとりで旅したら なんだか 知ってる気がして デ・ジャ・ぶーりん
 気が気じゃないのは 着がえだけじゃないのよね おさいふ落としちゃ アンビバぶーりん


Bメロではいきなり世界の名所を巡りだします。「なんだか 知ってる気がして デ・ジャ・ぶーりん」と、どうにも強がってしまう心情を吐露している。この娘がたとえメチャクチャ可愛くて、惚れてしまったとしても、世界のどの名所に連れて行こうが、「なんだか 知ってる気がして デ・ジャ・ぶーりん」で一蹴されてしまう。オンナの底知れなさがこの小節に溜まっている。豚ではない。そのワンフレーズで男の顔面をキックできる。

「なんだか 知ってる気がして デ・ジャ・ぶーりん」でオンナは男の首を、言葉で刎ねていると思う。

♪ ワクワク空を飛び越え(ぶぶぶぶーりん すぐとぶーりん)
 初めて行く国はどこ (ぶぶぶぶーりん よくとぶーりん)

 両手ですくった 小さな砂の粒 風に舞いながら たどり着くみたいに
 あなたにこうして せっかく逢えたのも 偶然じゃないわ 瞳そらさないで


"初めて行く国はどこ"。"初めて"の覚悟の敷居の圧倒。波を受け止める覚悟があるか?我々はタキシードを着て、身長を185cmにし、ストレッチなどで関節の間をミチミチに伸ばし、つま先立ちで少女からだばだば溢れでてくる感情の堤防として機能せねばならぬ。砂のたった一粒にすら、必然性を見出そうとしている中学生・女子の心理を無碍にできるのか?その問いに対し明確な回答を用意していないようであれば、身を入れて頑張って勉強をしましょう。いくらでも勉強すべきことがあるなこの世は。


posted by バスケ女 at 00:32| 文章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする