2016年04月10日

ナサニエル・ホーソーン『緋文字』と不倫に関してのブログ



1850年 米

緋文字の「A」はAdultery(姦通)の頭文字Aを表しているらしいけれども作品中そうですという種明かしをしているわけじゃない。Angel(天使)かもしれないしAble(可能性)とも受け取れる、そうやって正解を散らして、読者諸君に委ねてくる。緋文字、という作品は序章の「税関」で、ナサニエル・ホーソーンさんが実際に役所づとめだった時期にたまたま発見した(というていの)一片のドキュメントを押しなべていって語られる話であり、ドラマを吹き込んだ著者の想像力が必ずしもイコールで答えとは限らない、ことは本人も気づいていたので緋文字「A」をいかように捉えるかというワキの甘さはあえて残しておいた部分で、さあみんなで考えよう、と香取慎吾が昔いいともでアルタの100人から徐々に質問にYESと答えた人間の総数を減らしていくデスゲームを任されていたけれども、もしも、匿名性が護られているはずの「YES」のフォーカスがだんだん絞られていって特定された瞬間に照準が合い、撃ちぬかれてしまったとしたらそんなリスクなんか背負いたくない。絶対にバレないというレンガの向こうに立っているから石をぶつけられる。


旦那がいるのにもかかわらず、その旦那は船旅に出たっきり帰ってこない。死んでしまったんだろうという信憑性のない情報を掴まされたまま、町のエリート牧師に犯されて子どもをこしらえてしまった女、女を犯してしまい子どもまでこしらえさせてしまったけれども、「罪」と認識しているために苦しみ続けている牧師、そして実は死んでなかった旦那、産まれちゃった娘。


魔女狩りもガンガンやっていたし、清教徒が支配していて、不義を犯すことがそのまま死刑とされる社会で、酌量の余地ありとそれなら「A」の文字が刺繍された服を一生着ていなさいという判決が果たしてどっちが残酷なんだろうか、小さい娘がその「A」って何なのお母さん、と尋ねるのをはぐらかしつづけるのにも限界があるし開き直れるたぐいのものでもないし。一回きりのワンミスの反省が話の最後まで続く。母親に輪をかけて凹みまくるのが相手の牧師で、彼はその一回きりの、どうしてものついついのセックスだけをひたすら悩み続ける。街の連中は彼の説教を聞きに教会に来るし、あんなヤリマン殺してしまいましょうよ、にも歯切れの悪い受け答えしかできない。


"死んでしまった"はずの夫は嫁より相当年上でジジイで、頭のキレまくる医者でもあり、しかも不具者で、やっとのことでヨーロッパから海を渡って嫁の居るニューイングランドにたどり着き最初に目撃した光景が、嫁と身に覚えのない赤ん坊が公衆の面前で晒しあげられているまさにその瞬間だった。この元夫は復讐の塊になります。大事にしてやってた嫁に対してもそうだし、気づくんですよ。「あ、どうやら牧師の野郎が嫁とヤってますよこれ」っていう、でも直接問い詰めることはせずに牧師からゲロさせようとする狡猾さ。それが最も苦しいから。でも、こいつも悲しい奴で、不具持ちだから「ごく普通の幸せ」というものへのあこがれが強く、どうしても欲しくてたまらなかった。"なるほど年はとり、陰気で、不具だったけれども、それでも、どこにでも転がっていて、だれもが拾いあげている素朴な幸せを、わたしも拾いあげることができると思ったのだ。"


不貞を犯したら罰せられる文化や倫理観、人妻とセックスしたらいけないことはお釈迦様もキリストも仰っているけれども人間の動物の部分、前歯の部分が抑えられなくなってしまったとする。そんなことは是か非か問うまでもなく絶対的に非で、性欲の正当化じゃなくて、完全に非であると、悪うございましたと認め、命を棄てることまで考慮に入れている者を果たして許せるかどうか。然るべき処置とは一体何なんだろうか、誰もが「そこまでしなくても…」と一歩引いてしまうラインで土下座しないと許してくれないんだろうか。峯岸みなみが丸坊主になっても叩かれたのはもともとがそこまで可愛くなかったからだろうか。というかそもそも、不貞というのは不思議な罰で、当人間同士でしか不都合が生じないのに周囲は石を投げたがる(マリオカート64のドンキージャングルパークでコースアウトした時のあれです)。逡巡したら俺も私もどこかで知らない人間とセックスしたいという感情があるけれども、それを塞がなければ社会がメチャクチャになってしまうよね、と宗教では不貞を禁じた。それを赦すか赦さないかでまた揉める。個人の斟酌を争いの種火にするべきじゃないと思う。


この『緋文字』で、お前の考える最悪の罰が実行されないかぎり満足しない説が固まるシーンがあります。晒し台に向かう夫人をはためで見物している、ひときわブスの女が言い放つセリフ。"あのごたいそうに縫いつけた赤い字のかわりに、わたしのリューマチ用の湿布のきれはしをつけてやりゃ、そのほうがよっぽどお似合いってことさ!" 黄ばんでそうだからマジでやめてほしい。



posted by バスケ女 at 13:06| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする