2016年07月03日

坂口安吾『堕落論』




NHKの『100分de名著』で取り扱う7月度のテーマが坂口安吾の堕落論らしく観たいな、となったのに、独身寮のタコ部屋はなぜかNHK教育の電波が入らない。だから定時で終われてダッシュで家についても天才てれびくんが映らないから、最新のチャイドル情報を入手することが出来ない。チャイドルってとっくに言わなくなりましたね。誰が言ってたんでしょうか。吉野紗香さんのTwitterを見てみたら、ショートカットになっててうっかり出馬して落選してから姿一切見なくなったふうの外見になっておりショックでした。岡部まりさんは元気にしているでしょうか。岡部まりさん、探偵ナイトスクープの秘書やってた時の、けっこうな年を召されているのに若干下世話な依頼ハガキを少し照れながら読み上げるみたいなくだりが妙に嫌でした。しかもあれだけ芸人が揃った現場で誰も「いやまあまあのババアやないかい」と茶々入れてないのも不自然だった。ジャイアントスイングしろ石田靖。


お国のために死ぬのが美徳でブシドー、ヤマトダマシイだったはずなのに、いざ爆弾が落ちてきたら、いや生きたいわ!となり、結局残った人間も、帰ってきた兵隊も闇市で酒飲んでるし、夫が帰ってこなかった女ももう誰かとセックスをしている。六十、七十の将軍たちも責任とってハラキリなんかしていない。東条英機に至っては自決をミスっている。でも、「そういうもの」だから、お前らとっとと気づけ。という。武士道、マルクス主義、門閥、貞操、全部爆弾で焼き払われてしまう、あってないようなものにしがみつくな。自分の頭で考えて、自分の頭で武士道を思いつきなさい。しがみつくことを止める、崖から落ちろ、それが「堕落」だ。


だいたい坂口安吾はまず、キレる。ふすまをバーン!!と蹴って部屋にいきなり入ってきて包丁を畳に刺してから喋り始める。爆裂お父さんだ(もう2回ジャイアントスイングする人出てきた)。そして、俯いて真面目にギャグを言う。笑っていいのだか悪いのだかわからないすれすれの温度だから、今もう完全に死んでいて、残った文章を読んでいる立場だから安全なだけで、目の前で吹き出したらぶった斬られている。常時怒り状態、覇王丸、大斬り。ヨンチャンペ斬りです。


六十歳よりも二十歳の女がいい、と。なぜなら若くて可愛いから。だけれども、老いて死んでしまうから惹かれる。ハイロウズの『不死身の花』で、「愛されないのは枯れないから」とありましたが、絶対老けないババアは単なるホラーで、美しくもなんともないんです。堕落の例としてこういう下世話やあけっぴろげに女の話をするのも、笑かそうとしてるんじゃないか。


爆撃を食らったばかりの罹災者の行列の中で、十五、六、七、八の女だけが、ギャルだけが何が楽しいんだかゲラゲラ笑っていた。あの娘らは不安とか無いのか?"私は焼野原に娘達の笑顔を探すのがたのしみだった"と。ここでまた、安吾の「女は意味がわからない」が出てくる。こういうところから『夜長姫と耳男』とか『桜の森の満開の下』に出てくる狂った血みどろの女に繋がってくると思う。そして、爆撃前に電灯が一切消えた街を歩いてる時、"私は一人の馬鹿であった。最も無邪気に戦争と遊び戯れていた。"非常事態にふらふらほっつき回っている最中は何も考えないでよかった。常に考え、うなされている状態からようやく開放された。その一瞬だけ。ギャルだった。


『続堕落論』に進むと、今度は農村社会と天皇に額づく連中をなで斬りに攻撃する。まずムラ社会は、せこい。なんやかんや上から制度を押し付けられても、どうせわかりゃしないだろう、って誤魔化すし、排他的だしそのくせ農民精神などというものを掲げ、田植機で往復すれば済むところを腰をひん曲げて一本一本稲を植えなきゃいけないと爺さんが言う。耐えてるばかり、ノスタルジーに縛られてるばかりでお前ら一歩も進んでないだろうがと。「しきぬ ふみょへさんは坂口安吾が好きなくせにムラ社会的な考え方にハマってますね」と批判された。もうずっとムカついてるのでまた言う。でも仰るとおりで、例えば労働中、全部とっととLEDに総取り換えしてしまえよ、とハシゴ担いで蛍光灯の交換してる度に心で毒づいているところもあるが、ちょっと頑張ってる姿見せれてお礼言われたりするから嬉しいしそれもそれという。せこいですね。つるセコです。


"たえがたきを忍び、忍びがたきを忍んで、の命令に服してくれという。すると国民は泣いて、外ならぬ陛下の命令だから、忍びがたいけれども忍んで負けよう、と言う。嘘をつけ!嘘をつけ!嘘をつけ!" 戦争辞めたくて仕方なかったくせに悔しそうにふるまいやがってふざけんなよと。それにしても「嘘をつけ!嘘をつけ!嘘をつけ!」はすごい。これは推測でしかないけれども、闇市のカストリ、三級酒、Z級の何かをかっくらった勢いで書いてるんじゃないか。いくら無頼と行ったって、時の日の本そのものに真っ向から正気でタックルできるか。アルコール無しで。


と、こう実理にかなっていないもの、ウソをついているもの、あるいはウソをついている己に気が付かないふりをしているせせこましい連中を片っ端から乱取りしていった。『堕落論』の4年前に書かれた『日本文化私観』という文章があります。ブルーノ・タウトというドイツの大学教授が日本文化、桂離宮、伊勢神宮について「外」から見た印象を眼識した『日本文化私観』という本にぶつけた、というか題目完コピでぶつけにいった文章です。冒頭で、"タウトによれば日本における最も俗悪な都市だという新潟市に僕は生まれ"と安吾が書いている。4才まで新潟市内でそこから移って18まで新潟県上越市で過ごした自分としては、日本における最も俗悪な都市、と外国人に評され、思うところがある。時代は移ろったと言えど、反論は全く無い。あそこが最も俗悪であるならば日本中どこ行っても素敵で優雅だろ。ちょっと何か田んぼの間にでかい建物の工事が始まったら間違いなくパチンコ屋です。昔に日テレのスーパーテレビというドキュメント番組で、日本有数のパチンコ激戦区、と地元が特集されていた。悲しかった。ただマジで娯楽がないので、じいさんばあさんや地元に残った連中にとっては「必要」です。


タウトが日本を"発見"する前に俺は日本人なのだから、神社仏閣や枯山水が美しいかどうかはさておき今現状、不勉強ながら、日本の風景のどこにグッと来るかを考え始める。実理にかなっていないものは、安吾の基準から外されてしまう。着物だって日本人よりタッパのある外人が着たほうが似合うだろうがと。日本人はただ洋服に出会うのが遅かっただけ。京都に引っ越して、祇園の舞妓さんもうるせえばかりで何とも感じない、何とも感じなかったが、その格好の連中がダンスホールで踊っているのを見たら、洋服と比較されて場を圧倒していた。こっちのほうが良かった。


週末に通っていたなんば千日前のジュンク堂がこの3月につぶれた。その空きビルにドン・キホーテが入るらしい。店舗の周りがかなりめまいのする環境で、まずなんばグランド花月のど真ん前にある。茂造じいさん、すち子の着ぐるみと記念撮影をしている観光客、わなか、天竜ラーメン、似顔絵屋、ワッハ上方の若手ライブに出待ちしてる結構どころかメチャクチャ可愛い女の子たちの固まり、とか一切のうるさいガチャガチャしたところからシャットアウトされているので、なんでしょっちゅうあそこに通っていたかと言えば逃げ込まないと死んでしまうから。


よりによってドンキかい、ジュンク堂跡地にドンキかい。「ボリューム満点」で「激安」の「ジャングル」!?。もういいだろ。というか宗右衛門町にもあるだろうがよ。しかしながら必要性という面で言えば大陸からやってきた人らが電化製品だの薬だのガラガラ引きながら買っていくのだろうし、行ったら妙にハリボー買ってしまうので本読む代わりにハリボー食って帰りたくなるかもしれないが、一抹に寂しい。要るのはドン・キホーテで要らないのはジュンク堂ということになってしまった。ますます行くところがない。


小菅刑務所やドライアイス工場など、余計な飾りっけを一切省いた、「必要性」だけで構築されている建築物を安吾は美しいと言う。必要がなければ法隆寺も駐車場にしろと。ウソや瞞着を許せない、許せなさすぎた。小林秀雄にも「武器を取れ」と胸ぐらをつかみに行ったし、宮本武蔵にまで「死ぬまで戦場に立てよ」と噛み付いた。そして自身は酒とクスリのやり過ぎで死んでしまった。東京に降り注いだ爆弾はかいくぐったのに、よもや己が爆発して死んだ。


ごまかさないで生きろと。俺はこれを信じているので大丈夫だ、を見つけろ、それは「堕落」と言いながら厳しすぎる道だ。志村けんのだいじょうぶだぁ の志村けんは優香を失い、だいじょうぶでは無くなってしまった。100分de名著の堕落論の回、朗読は志村から優香を奪った青木崇高です。ひどい。今フジの深夜でやっているコント番組は「志村の時間」らしい。志村の時間。もうあまり長くない。そして我々の時間も。みんなでピンクフロイドのタイム聴きましょう。こんなことをしている場合じゃなくて生きねば……
posted by JET at 09:29| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする